村八分

同和地区

お金が湧く不思議な箱

 小さい頃、実家のお寺をウロウロしていたら見つけた大きな箱。何やら難しい字が書かれていて、上に隙間がある。気になって調べていると、どうやら簡単に開くようで、意を決して開けてみたら、中にはお金が入っていた。

 何故こんなところにあるのだろう。何故放置されているのだろう。いろいろと疑問が出てきたが、どれもわからない。考えているうちに日も暮れ始めていたので、この日は箱を閉じてお寺を後にした。

 

 翌日、また箱を開けた。中にはまだお金が入っている。しかも、昨日より増えていた。もしかしたらこれは、お金が湧く箱なのだろうか。確認のため、もう1日様子を見ることにした。すると翌日、やはりお金が増えている。これはお金が湧く箱だ。そして、おそらく自分以外は誰も気づいていない。その日から、お金を取り出してはお菓子やジュース、アイスやのっぽパンを買うようになった。多めに取って、本を買うことも。

 お金が湧く不思議な箱があるとは、誰にも言わなかった。独り占めをしたかったからだ。そして、必ず人がいない時に取り出すようにしていた。これも、独り占めするためだ。だから、それは賽銭箱だと注意されることもなかったし、お賽銭をする人を見ることもなかった。何も知らずに、お金を取り続けた。

 

 気づいたのは、小学校高学年の頃。でも、やめようとは思わなかった。お小遣いも十分貰っているし、お金に困っているわけでもない。ただ、多いに越したことはないし、なんとなくで取り続けた。そのまま、中学、高校とずるずる続けている。Aqoursに入って、ダンスの練習や体力作りの基礎トレーニングも始め、以前よりもお腹が空くようになったので、のっぽパン代がいる。メンバーのみんなとの付き合いも増えたし、遊びに出かけるにもお金がいる。たくさん本を読んでいると、楽しくて楽しくて、もっと本を読みたくなる。全部、我慢すればいいことだが、そのブレーキはマルにはもうない。すぐ近くに、勝手にお金が湧く不思議な箱があるのだから。